ノギスの校正:(社内校正の方法)②(補足記事)
- SOKADA
- 2023年9月27日
- 読了時間: 4分
更新日:1月24日
先日のブログで少し説明の足りない部分があったため、補足として記述します。
まだ読まれていない方は先にこちらの記事からどうぞ。
もくじ
1. 資格と力量
社内で使用しているノギスを品質管理のために社内で校正するだけであれば特別な資格は必要ありません。但し、校正証明書などが必要な場合にはノギス製造元や外部の校正機関に校正を依頼する必要があります。(ちなみに一般校正とJCSS校正があります。)
資格が必要ないからと言って力量の無い人が校正作業をしたところで信頼性はありません。講習や研修を受けた人に限るなどの社内基準を設ける必要があります。しかし、そこまで難しいことではないのでこのブログやノギスメーカーのホームページなどで十分に理解できると思います。
2.ノギスの最大許容誤差について補足説明
昔は器差という表現を使用していましたが、現在は最大許容誤差(MPE)という表現になりました。さらに部分測定面接触誤差の指示値の最大許容誤差(EMPE)とシフト誤差の指示値の最大許容誤差(SMPE)に分かれています。(最大許容誤差には、繰り返し精度及び量子化誤差が含まれています。)
簡単に言うと通常のM型標準ノギスで言う外側ジョウで部分的に接触した状態での誤差をEMPE、それ以外の内側測定、段差測定、深さ測定、内径測定はすべてSMPEになります。(JIS規格)。合否判定にMitutoyo規格を採用する場合の、SMPEの内訳は下記表1を参照してください。
間違えやすいですが、合否判定にMitutoyo規格を採用する場合は、外側測定と内側測定の最大許容誤差は同じになります。ですから社内校正後に合否判定をする場合には、内側測定はEMPEの値を参照しなければなりません。(表1や表3を合否判定基準にした場合)

JIS B 7507:2022と、おそらく日本で一番普及していると思われるMitutoyo製のデジタルノギス(500シリーズ)の最大許容誤差は、下記の表3を参照してください。多少の差異があることがわかります。下記の表を参考にして御社で合否判定基準を作成してください。また一般的ではない専用ノギスなどはメーカーのHPなどを参照してください。


3.ノギスの社内校正時に知っておきたい規格(JIS B 7505:2022、ISO13385-1:2019)
3-1.部分測定面接触誤差(EMPE)
部分測定面接触とは測定面の一部と測定対象物の外殻形体との接触と定義されています。
下記表4に従って最小数以上の試験点を使用して、可能な限り均等に分散する。
少なくとも一つの試験点は測定範囲の90%以上でなければならない。
基準点は最小試験点数に含まない。
部分測定面接触誤差の試験で用いる最大及び最小の測定標準に対しては、外側用測定面の二つの試験点(一つはジョウの根本、一つはジョウの先端近く)で測定する。
部分測定面接触誤差を算出する場合、複数検査の平均化をしてはならない。
よって、例えば150mmのノギスであれば、
①50mm(ジョウの先端)
②50mm(ジョウの根元)
③100mm(ジョウの中央)
④150mm(ジョウの先端)
⑤150mm(ジョウの根元)
の5点で測定することが最低限必要となります。

3-2シフト誤差(SMPE)
シフト誤差とは、外側測定面以外の指示誤差で、外側測定面でゼロセットした後、他の測定面で測定した誤差でと定義されています。
内側測定面の試験点数は1点以上。
深さ用又は、段差測定面については、50mm未満のブロックゲージと定盤を用意し測定を行います。試験点数は1点以上です。
小さな内径測定でのナイフエッジの内側用測定面の交差によるシフト誤差は、呼び径5mmのリングゲージを測定します。(300mm以下のノギスに適用)
3-3校正ガイドライン:【JIS B 7505:2022附属書A(参考)に記載】
1)一般
校正は測定範囲にわたり計測特性試験、関連した校正を考慮。
例:外側測定だけに使用する場合はシフト誤差に関する計測特性の試験は不要と見なしても良い。
2)線接触誤差
線接触誤差とは、測定面と測定対象物の外殻形体との線接触と定義されています。線接触誤差は校正時に確認することになっています。
使い古したノギスにとって重要であり、新しいノギスには不要(摩耗)
試験前に光にかざしたときの隙間の観察を推奨
外側用測定面に沿った様々な位置で小さな円筒測定標準※で試験される。
EMPE=±aの場合、線接触誤差=2a(範囲)
※Φ10のピンゲージなど

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